2012年7月21日土曜日

村上春樹著「アフターダーク」を読んだ。夜明け前。

2004年9月発表の約三百頁の長編小説。ある日の深夜から始発が出るまでの間に都会の真ん中で過ごす人々を描いたもの。
この作品はその後の「海辺のカフカ」や「1Q84」など逆順に読んだので「アンダーグラウンド」後のスタイルを模索する過渡期的な作品という印象を受けた。タイトルからしてジャズの曲名を使用しており、従来の村上春樹の立ち位置から始めて、少しずつダークなものや説明のつかない奇妙なことを散りばめて、最終的には薄っすらとした明るさのようなものを匂わせて終わっている。「アフターダーク」の意味が、深夜と早朝の2重のことを指していることが最後になってわかる。
 終盤の明け方のストーリー展開部分は無理に明るい方向にもっていっているような印象もあり、そういう意味でも「海辺のカフカ」への途中ステップだと考える。また、2005年発表の「東京奇譚集」と同じくこの頃の村上作品は安っぽく奇妙なことや偶然的なことを模索していた時期ではないかと思った。

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